US
追いかける恋はTOO SERIOUS カッコ悪いだけだから
危なげな君なんかもう このまま忘れたいけど
追いかける恋はMYSTERIOUS シャクだけど ほっとけない
相変わらず今夜CALLING YOU いつかは僕だけのJUST MY GIRL
SONG by AXS:『US』
AXS/『AXS SINGLE TRACKS』より

「ねぇねぇ蔵馬♪ご飯食べに行こうよ〜。すっごいいい店見つけたんだ〜(はぁと)」
時は金曜の夕方、はうきうきと携帯をかけていた。今日は、久し振りに蔵馬に会える日。ここ2週間程、お互い――特に蔵馬が院の研究と病院の当直が立て込んでいて――ほとんど顔を合わせられなかったのだ。今日と明日と明後日、2日とちょっとの間は他の予定は完全にシャットアウトして、お互いの為に時間をつくって、誰にも邪魔されない週末を満喫する予定。
「ラビオリが手打ちの自家製なんだけど、めっちゃ美味しいんだよ。デザートも自家製で、特にパンナコッタが超絶品なの。きっと蔵馬も気に入ると思うよ」
嬉しそうに、本当に嬉しそうに話す。その顔は、本当に幸せそうなものだったが、次に聞こえてきた蔵馬の言葉で、彼女は一気に天国から地獄へと突き落とされる事になる。
「‥‥ごめん。。今日は勘弁してもらえる?」
「え?何、それ?どゆこと?」
「うん、実はね、急に仕事が入って‥‥。ごめん。埋め合わせはちゃんとするから、ね?」
「待ってよ。今日はもう、前から約束してたじゃない。なんで?」
「ちょっと医局に詰めることになってね‥‥」
急な仕事、医局、と2つの言葉が続いて、も流石にこれ以上の抗議の言葉を紡ぐのを諦めた。緊急手術が入って夜勤の手が足りなくなったから駆り出されたとか、そんなオチなのだろう。医療系の彼氏持ちにはよくある事、だ。ここでわがまま言ったところで、もはやどうしようもない。わがままを通せば人の命に関わる事にもなるから、ちょっと寝覚めも悪い。ここは自分が折れないと、タダのわがままなガキ、だ。
「‥‥‥うん‥‥」
『わかった。それじゃ仕方ないね。蔵馬も、お仕事頑張ってね(はぁと)』と、夜勤の慰めになるようにハートマークつきで後につけようとした言葉は、携帯の向こうから聞こえてきた、とある一言により、永遠に封じ込められる事になる。
「オイ、南野。飲みに行くぞ」
はぁ?思考が停止した。キョウノドタキャンハシゴトノセイジャナカッタノ?てゆーか、仕事と嘘ついてまで飲みに行くわけね?私の事は2週間もほったらかしにしておいて(怒)
「あ‥‥」
聞こえた言葉に呼応するような蔵馬の、しまった!と言うニュアンスが十二分に感じられる呟きが、地獄行きフリーホールの速度をアップさせる。むか。ふつふつと湧き上がる感情のままに、は一つ大きな深呼吸をすると、こう言った。
「‥‥‥蔵馬の‥‥‥馬鹿ぁぁぁぁっ!!!」
鼓膜を破れとばかりにたたきつけると、通話を一方的に切る。なんて最悪な日なんだろう。今日の運勢、は絶対一番のアンラッキーデイだとテレビか雑誌で言ってるはずに違いない。
「‥‥‥謝ったって、当分許してあげないから‥‥」
呟いた一言と共に、の周りに漂っているオーラは、彼女が人間なのに関わらず、どうしても妖気としか形容の出来ない物、だった。



コメントと言う名の言い訳
‥‥キリのいいところまで出来たのでアップ。
まずは設定の補足を。時間軸的に言うと、連載終了後、の話になります。うちの南野君は、秋光の趣味により医学部に進学してくれて、そのまま院へ進んでます。病院診療と、研究に忙しい日々を送っています。末は医学博士なのよ。うふふ。
ヒロインの方も人文学系の学部卒業してそのまま大学院生に、と言う設定。
原作の社会人南野がよかった皆さん、石を投げないで〜〜(><;;
だって、白衣姿見たいんだもん(爆)
ヒロインと蔵馬の会話の元ネタは緒方恵美様のアルバム『多重人格』のなかににある『カミングアウト』って曲中のセリフです。
曲中のセリフをベースに若干アレンジを入れました。と言うか、『US』自体が学生の頃、『カミングアウト』を聞いて、煩悩のほとばしるままに描き散らしたなつきと蔵馬の痴話喧嘩一ページ漫画だったり。
とりあえずちゃん怒ってます。すっごく怒ってます。どの位怒ってるかは、きっと続きで明らかになるはず‥‥(−w−;;