「確認するよ。さっきのええ勿論、っていうのは、本当にが自分のいる場所とおかれている立場を理解した上で言ったんだね?」
「そうよ。ちゃんと理解した上で言ったの」
自信たっぷりに言い切ったを見て、蔵馬は大げさにため息を一つついた。
「さっきの返事は現在地と自分の立場を理解してる聡明なお嬢さんのものだとは、オレには到底思えませんが?姫君?」
蔵馬の表情と眼光に少し皮肉げな色が混じる。
「‥‥もう一度、最初からおさらいしてみようか。、ここはどこ?」
「黄泉のお城」
「もっと詳しく」
「癌蛇羅にある、黄泉のお城」
「癌蛇羅はどこにあるの?」
「魔界」
「魔界がどんな所か答えて」
「大統領のおかげでとりあえず表向き平穏だけど、基本的に弱肉強食で、人間を食料としか見ない妖怪魔物もたくさんいるところ」
「他に魔界について知ってることは?」
「瘴気が濃いから普通の人間は肺が腐り落ちるの。備えも無く外に出たら、命に関わるわ」
「じゃあ、、君は、妖怪と人間、どっち?」
「精霊使いなおかげで、寿命とか老化関係とか、色々イレギュラーで規格外にぶっ飛んだ能力(力)や特徴がいっぱいあるけれど、人間よ。一応。」
「その通り。おさらいは全部正解。パーフェクトだね。確かに君は賢くて聡明ないい娘だ。その聡明な良い子が、なんでオレが何が何でもダメだと言う事をしようとするのか、理解に苦しむね」
質疑応答が積みあがるたびに、微妙に蔵馬の発する妖気がぴりぴりしたものへと変化していき、の発するオーラも『女王様』モードへとシフトしていくのが周りの4人には手に取るように分かった。
「もう、うんざりよ。幾らここが小さな町が丸々入る位の大きさで、私が貴方の言う事をよく聞く聞き分けのいい良い子でも、我慢の限界ってものがあるの」
一旦言葉を切ると、は『無敵の女王様』モード全開で言い放った。
「‥‥外に出してちょうだい。このままだと退屈で死んじゃうわ」
「ダメ。いけません。魔界に来る前に約束したでしょう。城の外には出ないって」
『女王様モード』全開のにひるむことなく、蔵馬は彼女の要求を一言で切って捨てた。
「退屈なら、図書室に行けば良いでしょう。君が泣いて喜ぶ程の質量共に充実した蔵書が唸ってるはずだよ」
「ええ、確かに泣いて喜べる質量だったわ。でも、図書室の蔵書は全部古代魔界文字で書いてあるの!私の古代魔界文字の読解力、蔵馬はわかってる?」
「人間界で言うと出来のいい小学生LVはあったと記憶してるけど?」
「そうよ。癌蛇羅の図書室に、どれだけ小学生が読めるLVの蔵書があると思うの?部分的に拾い読みできたものも勘定に入れても、両手両足で間に合うだけだったわ。もう、とっくに読み尽くしちゃった」
「‥‥商業地区や温室やジムや訓練場には行かなかったの?ジムにはプールもあったでしょう。」
が小さな町が丸々入るくらいの大きさ、と形容しただけあって、黄泉の城には、軍事的な設備のみならず、日常生活に必要な商業施設や娯楽や福利厚生の為の施設がそれなりの規模で整えられている。それも、中にいる者が城から一歩も出ずに生活しようと思えば出来るほどに。
「行ったわ。みんな。でも、全部つまんないんだもん!」
は首を激しく左右に振って、子供のように地団太を踏んだ。
「つまらない?確かに、人間界のものとは、ちょっと違うところもあるかもしれないけど、全部が全部君の気に召さないはずはないはずでしょう?」
いぶかしげに問う蔵馬。
「だって、お城の人たちはみんな、私が何か、見たり、しようとしたりするたびに、『危ないからやめてください』って止めるのよ!」