大切を気付くもの |
それは、いつも通りの『日常』のはずだった。『三蔵一行』を狙う妖怪達の襲撃にあって、全員ジープから飛び降りて、いつも通り襲撃者の人数の確認と一人当たりのノルマの発表‥‥今日は1人頭9人だ。一斉に襲って来た妖怪達を迎え撃つと、あとは各人バラバラの乱戦になった。 銃声が響き、気孔がきらめき、如意棒と杓杖の敵を叩き伏せる鈍い音が銃声とハーモニーを奏でる。それに呼応するようにの2本の蝶剣が鮮血で宙と大地にマーブル模様を描いた。 「‥‥7ぃっ!!あと、ノルマ2人っ!!」 悟空の溌剌とした声が敵を叩き伏せる音と重なった。 「おーおーサル張り切っちゃってんね〜」 悟空の声を受けるように悟浄の軽口。ここまではいつも通りの『日常の光景』だった。次に起こったのは、本来なら『ありえない』出来事。 自分に切りかかってくる蛮刀を現在進行形で受け流していたが砂地でもないのに大きくたたらを踏んでバランスを崩したのだ。完全に流しきれなかった幅広の刃がの左肩と腕の付け根辺りに滑る。鮮やかな赤い飛沫があとを追う様に宙を舞った。 『‥‥痛っ!!』 乱闘のさなかとはいえ、流石に苦痛で眉がひそめられる。 「!」 その光景を目撃した八戒の心配そうな声が飛ぶ。 「ごめん!ちょっとドジったけど、心配しないで!」 は、八戒にそう叫び返すと自分を傷つけた相手の更なる攻撃を、今度は綺麗に受けきると、鮮やかな剣捌きで切り捨てた。 息をつく間もなく、彼女の足元を杖だか矛だかがなぎ払う。長縄跳びの要領でジャンプしてそれを避けると、なぎ払いをかけた相手の懐に飛び込んで、下から上へと切り上げた。同時に背後で、どさりと何か重たい物が倒れる音。 「ちゃん、後ろがお留守よ」 振り向くと倒れている妖怪とそれを倒したらしい悟浄の姿。 「悟浄。ごめん」 「い〜から。ほら前、次、来てるぜ」 目の前に肉薄していた新手に気付いていなかったらしい。慌てて剣を構えると、ギリギリで攻撃を受け止めたが、流しきれずに相手と鍔迫り合いの力比べになってしまう。幾らの剣の技量が高くても、純粋な力比べになっては男性の力に抗しきれる訳も無く、じりじりと押されてしまう。不意に、の目が一瞬虚ろになって、がくりと膝が折れた。チャンスとばかりにそのまま力で押し切ろうとする敵妖怪。一瞬の放心から回復したは、相手の勢いを利用して、くず折れながら左手に握った剣で、深々と相手の腹を突き刺した。返り血がの服を染め、倒れた妖怪の下敷きになる。 「―――っ!!大丈夫か―――?!」 犬が尻尾を振って主人に飛んでくるかのように、その光景を見た悟空が飛んできた。 「ん‥‥悟空、大丈夫‥‥」 はじたじたともがきながら、下敷きにされた妖怪の下から這い出てくる。ようやく脱出して、悟空に向かって笑顔を見せて、立ち上がろうとして、そのままは糸が切れたマリオネットのようにうつぶせにぱたりと倒れた。 「??八戒――っ!!が――!!」 真っ青になって駆け寄る悟空。 「?大丈夫ですか?」 悟空の声に応じて飛んできた八戒がを抱き起こして介抱にかかる。 「ちゃん、大丈夫?」 「熱が‥‥酷いです。怪我もしてますけど」 「が、どうかしたか?」 素っ気無い口調だが、流石に心配らしく、三蔵も近づいてくる。 「三蔵!がケガして!熱もあるって八戒が‥‥」 悟空の心配げな声を聞きながら、の意識は暗闇に沈んで行った。 |
あなたが意識を取り戻した時傍にいたのは誰? 三蔵 八戒 悟浄 悟空 |